What’s Ammonia? アンモニアとは

世界の人口は増え続け、今や70憶人を超えています。この人口増加を支えているのが、強い臭いで知られるアンモニア(NH3)です。農作物など植物の生育には窒素(N)が必須で、その供給源としてアンモニアが使われています。アンモニアの安定供給無くして、農作物の安定供給、そして今の人口は存在し得ないと言っても過言ではありません。

アンモニアについて

分子式がNH3で表される無機化合物です。常温常圧では無色の気体で、特有の強い刺激臭を持ちます。水によく溶けるため、水溶液(アンモニア水)として使用されることも多く、化学工業では基礎的な窒素源として重要です。

世界での年間生産量は約1.8億トンであり、生産される化学品の中でも最大級の生産量を誇ります。

名称の由来は、古代エジプトのアモン神殿の近くからアンモニウム塩が算出されたことによると言われています。ラテン語のsal ammoniacum(アモンの塩)を語源としています。
アンモニアを初めて合成したのはジョゼフ・プリーストリー(1774年)と言われています。

アンモニアの特性

分子量:17
沸点: −33°C
凝固点: −78°C
可燃性ガスに分類され、人体にとっては毒性を有します。
特有の鼻をさすような刺激臭をもつ

アンモニアは、多種多様な用途に利用される。

肥料:アンモニアの用途の約8割は肥料用と言われている。尿素を筆頭に、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸カリウムなど様々な窒素系肥料がアンモニアを原料として製造される。北米では液体アンモニアを直接土壌に撒く施肥方法も多く見られる。

化学原料:N源が入った様々な化学品の原料になり、樹脂、食品添加物、染料、塗料、接着剤、合成繊維、合成ゴム、香料、洗剤などが作られる。

脱硝:環境に有害な窒素酸化物(NOx)の発生を抑制するために火力発電所のボイラーなどに設置される、選択触媒還元脱硝装置の還元剤として使用される。

火力発電用燃料:アンモニアは条件次第では燃焼し、燃やしても二酸化炭素が発生しない。このためアンモニアを火力発電用燃料として使う技術開発が行われている。

エネルギー(水素)キャリア:水素を液化するよりもアンモニアを液化する方が低エネルギーで済むため、エネルギーや水素貯蔵・輸送手段の一つとして研究されている。また、アンモニアから直接エネルギーを取り出す燃料電池などの開発に取り組む企業も出てきている。

様々なアンモニアの用途

アンモニアの世界生産量推移

どうしてアンモニアが重要なのか

我々人間が生きていくためには窒素が不可欠です。窒素はタンパク質やアミノ酸、ひいてはDNAの構成材料でもあり、人間にとって重要な元素の1つと言えます。

空気の約80%は窒素で成り立っていますが、人間はこの空気中の窒素を直接体内に取り込むことができません。一方、植物は、土壌に含まれる窒素源(アンモニアや窒素化合物)を根から吸収することができます。そこで人間は、作物を食べることで、体内に窒素を取り入れて、生きていく上で必要な物質に変換しているのです。

ここで、作物を十分に生育させるためには、多量な窒素が必要で、窒素肥料が不可欠です。そのため、昔は土に堆肥を混ぜたり、 鳥の糞の化石(グアノと呼ばれる)を混ぜたり、マメ科の植物を植えたりなど、窒素源を土壌に混ぜる方法がとられてきました。

しかしながら、産業革命以降、急増する人口を賄うにはそれらの作物の育て方では間に合わず、19世紀に入り、化学肥料(窒素肥料)の元となるアンモニアを人工的に合成する研究が始まりました。
現在では、アンモニアは世界で約1億7600万トン(2016年)生産されており、そのうち約8割が肥料として使われています。

窒素循環のモデル図

ハーバー・ボッシュ法

フリッツ・ハーバー(1868〜1934年)

カール・ボッシュ(1874〜1940年)

窒素といえば、空気の約8割を占めます、非常に安定な気体(窒素分子N2)になります。「非常に安定」を言い換えれば、植物が分解して利用するのが難しいということです。大量に存在する安定な窒素分子N2から、植物が体内に取り込みやすい窒素肥料として、人工的にアンモニア(NH3)を合成する研究が行われました。数多くの研究者が取り組む中で、1909年にフリッツ・ハーバーが、窒素ガスと水素ガスからアンモニアの合成(3H2+N2→2NH3)に初めて成功しました。この反応を工業用に発展させたのが、カール・ボッシュです。このことによって、アンモニアの大量合成が可能となり、現在もハーバー・ボッシュ法として広く利用されています。

この開発の中で、肝となる要素が触媒でした。窒素ガスと水素ガスを1対3の割合で混ぜてもアンモニアにはなりません。アンモニアにするには、窒素分子の結合が切れ、水素と反応する必要があります。この結合は強く、なかなか切ることが出来ません。一般的には温度や圧力を上げる方法がありますが、窒素分子の場合は800℃に加熱しても困難です。その反応を容易にするのが触媒となります。触媒は窒素分子を吸着し、電子を与えることで結合の開裂を促進させます。ハーバーが最初に見出した触媒は、希少元素であるオスミウム(Os)をベースにしたものでした。高価なオスミウムは工業化には難しく、カール・ボッシュの同僚であったアルヴィン・ミタッシュによって、鉄(Fe)をベースに、カリウム(K)、アルミニウム(Al)、を加えた触媒が開発され、ハーバー・ボッシュ法が完成しました。この触媒は、ハーバー・ボッシュ法が確立して以降、およそ100年以上経った現在でも使われています。