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分離膜を用いたアンモニア製造プロセス実現に向け三菱ケミカル株式会社と共同評価契約締結〜超小型アンモニア製造技術の実現に向けた連携を開始〜
- Publish :
- 2020.11.17
つばめBHB株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役 渡邊昌宏、以下「弊社」)はアンモニアを選択的に分離できるゼオライト膜の技術を持つ三菱ケミカル株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 和賀 昌之、以下「MCC社」)と分離膜を用いた小型アンモニア製造プロセス実現のために共同評価契約を締結致しました。
MCC社のアンモニア分離膜の開発は、東京工業大学の細野秀雄栄誉教授らが科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業ACCEL注1)「エレクトライドの物質科学と応用展開」(研究代表者:細野秀雄、プログラムマネージャー:横山壽治)の研究開発において共同で開発された経緯を持ち、同じく当ACCELにより発見・発明したエレクトライド触媒を用いたアンモニア事業を進める弊社とは技術のシナジー効果を発揮できる関係になります。
アンモニアの生成反応は平衡反応であり、理論上平衡組成以上にアンモニア濃度を高めることができないという課題があります。そのため既存のハーバー・ボッシュ法(以下「HB法」)では未反応原料の水素と窒素を再度反応器に戻すリサイクルプロセスを持ちますが、それが大型プロセス・設備コスト高の原因になっています。従って、生成したアンモニアを膜により分離するという反応分離型プロセスを開発することが出来れば、反応器の中での原料転化を著しく高める可能性があるためリサイクルプロセスを削減でき、より小型・低コストのプラントを目指すことが出来ます。今後、MCC社及び弊社はこの共同評価を通じて長期耐久性、プロセスの設計及び最適化などの実用化に向けた各種データを取得し、超小型のオンサイトアンモニア製造プロセスの実現に向け、準備を進めてまいります。
現在、アンモニアは100年以上前に発明されたHB法を用いて主に生産されています。HB法は空気中の窒素と、天然ガス等から得られる水素注2)のみでアンモニアを合成することができる非常に優れた生産技術であり、世界中で広く活用されています。一方、HB法は高温かつ高圧の反応条件が必要であり、高いエネルギー負荷がかかる大型プラントでの一極集中・大量生産を行わなければならず、設備投資が高額になるという課題があります。加えて、アンモニアを生産拠点から世界各地に点在する需要地に輸送するためには、専用の運搬装置と保管設備が必要であることから物流コストが非常に大きいことが課題となっています。
この課題を解決するために発明されたエレクトライド触媒は、低温・低圧条件下で高効率のアンモニア合成が可能であることが特徴です。低温・低圧の反応条件であることから、従来HB法では難しいとされた年産数万トン以下の小規模プラントでの生産が可能となります注3)。将来、この技術の実用化により、必要な量のアンモニアを必要とされる場所で生産する、「オンサイトアンモニア生産」モデルの実現が期待されます。
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注1)科学技術振興機構の事業の一つで、世界をリードする顕著な研究成果のうち有望なものの、企業などではリスクの判断が困難な成果を抽出し、プログラムマネージャーによるイノベーション指向の研究開発マネジメントにより、企業やベンチャー、他事業等に研究開発の流れをつなげている。
注2)宇宙で最も多く存在する元素。近年では燃料電池車の燃料等クリーンエネルギーとしても着目されている。
注3)一般的に、HB法によるアンモニア生産は年産数10万トンスケール以上のサイズが必要。