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お知らせ News

アンモニア製造パイロットプラントにて触媒量30%低減の可能性確認 〜世界初のエレクトライド触媒を用いたアンモニア製造技術の商業化に向け前進〜

Publish :
2020.10.05

つばめBHB株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役 渡邊昌宏、以下「弊社」)は味の素株式会社川崎事業所内に設置する弊社R&Dセンター川崎分室のオンサイトアンモニア製造パイロットプラントにて、エレクトライド触媒を用いたアンモニア生産を達成し、必要触媒量が30%低減できる可能性を確認しました。

アンモニア製造パイロットプラントで得られた成果

  1. 触媒活性がラボ試験時より高いため、触媒量を30%低減できる可能性が高い
  2. 年間20トンの運転能力での連続運転を達成
  3. 触媒ハンドリングの容易性・安全性・活性持続性などを確認
  4. 来年の実用化を目指し、様々な検証を実施

 

1. 触媒活性がラボ試験時より高いため、触媒量を30%低減できる可能性が高い

アンモニア生産運転の中で触媒活性に関する試験を実施し、運転条件最適化検討(反応器温度・圧力など)を行いました。その結果として、触媒活性についてラボ試験時より高いことが確認できたことで、必要触媒量が想定より30%程度低減できる可能性が示唆されました。この成果は、年間数千トン以上の能力である商用機の導入に向け、より少ない触媒量で設計・運転することができる可能性(経済性の向上)が示されたこととなります。今後もパイロットプラントにおいて触媒に関する試験を継続し、効率的なアンモニア生産プラントの早期実現を目指します。

図:パイロットプラント評価前後の想定触媒量

 

2. 年間20トンの運転能力での連続運転を達成

昨年10月のパイロットプラント竣工後に、公称能力である年間20トンの運転能力での連続運転を達成しました。現在まで一般的にアンモニア生産に用いられているハーバー・ボッシュ法(以下「HB法」)と比較し、より低温低圧条件でのアンモニア生産を実証しました。低温低圧という運転条件の緩和により、従来HB法では難しいとされた年産数万トン以下の小規模プラントでの生産が可能となり、商業化に向けて大きなステップを踏むことが出来ています。

図:当社パイロットプラント

3. 触媒ハンドリングの容易性・安全性・活性持続性などを確認

昨年12月から現在の運転操作において、反応塔への触媒の充填・連続運転・抜出操作を複数回実施しました。これにより触媒ハンドリングの容易性・安全性・活性持続性などの確認が成され、商用機における触媒の取り扱い方法および連続運転に向けての知見を得ることが出来ました。さらに触媒の活性化や失活のデータ取得及び活性化方法等に関しても今後商用機に活用できる貴重な知見が得られています。

4. 来年の実用化を目指し、様々な検証を実施

引き続きパイロットプラントの運転を継続しながら、各種検証を実施する予定です。一例として、現触媒の反応条件に関する性能検証、原料ガス組成に関する試験、寿命試験、第二世代触媒に関してのパイロットプラントでの活性評価試験等を実施する予定です。

弊社は世界初のエレクトライド触媒を用いたオンサイトアンモニア生産の実用化を目指し、事業展開を行っております。まずは味の素株式会社の発酵素材工場における本技術の導入を目指しており、さらに様々なパートナー企業と連携し、農業肥料、食品・医薬品、化成品等への適用拡大を図り、より環境に配慮したサステナブルな生産システムの実現を通じて社会への貢献を目指します。

 

【パイロットプラントの立ち上げ背景】

本プロジェクトの背景としては、世界初の試みとなる東京工業大学の細野秀雄栄誉教授らが科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業ACCEL注1)「エレクトライドの物質科学と応用展開」(研究代表者:細野秀雄、プログラムマネージャー:横山壽治)の研究開発により発見・発明したエレクトライド触媒を用いたアンモニア製造装置での、運転検証となります。弊社はこの連続運転を通じて長期耐久性、最適な運転条件などの実用化に向けた各種データを取得し、弊社がターゲットとする年産数千から数万トンスケールのオンサイトアンモニア製造装置の量産に向け、準備を進めてまいります。

現在、アンモニアは100年以上前に発明されたHB法を用いて主に生産されています。HB法は空気中の窒素と、天然ガス等から得られる水素注2)のみでアンモニアを合成することができる非常に優れた生産技術であり、世界中で広く活用されています。一方、HB法は高温かつ高圧の反応条件が必要であり、高いエネルギー負荷がかかる大型プラントでの一極集中・大量生産を行わなければならず、設備投資が高額になるという課題があります。加えて、アンモニアを生産拠点から世界各地に点在する需要地に輸送するためには、専用の運搬装置と保管設備が必要であることから物流コストが非常に大きいことが課題となっています。

この課題を解決するために発明されたエレクトライド触媒は、低温・低圧条件下で高効率のアンモニア合成が可能であることが特徴です。低温・低圧の反応条件であることから、従来HB法では難しいとされた年産数万トン以下の小規模プラントでの生産が可能となります注3)。将来、この技術の実用化により、必要な量のアンモニアを必要とされる場所で生産する、「オンサイトアンモニア生産」モデルの実現が期待されます。

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注1)科学技術振興機構の事業の一つで、世界をリードする顕著な研究成果のうち有望なものの、企業などではリスクの判断が困難な成果を抽出し、プログラムマネージャーによるイノベーション指向の研究開発マネジメントにより、企業やベンチャー、他事業等に研究開発の流れをつなげている。

注2)宇宙で最も多く存在する元素。近年では燃料電池車の燃料等クリーンエネルギーとしても着目されている。

注3)一般的に、HB法によるアンモニア生産は年産数10万トンスケール以上のサイズが必要。

 

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